その2.「オンライン交流会」の可能性
一般社団法人After Surgery Fun Run協会(ASFR協会)と一般社団法人心臓弁膜症ネットワーク(心臓弁膜症ネットワーク)の後援でASFR協会関西準備委員会が大阪で患者交流会を開催する予定がありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止となりました。
その代わりに、心臓弁膜症ネットワークの呼びかけにより三者にてZoomでのオンライン座談会を行いましたので、その模様を3回にわけてお伝えします。
■座談会の主なポイント
- 新型コロナウイルス感染症拡大防止対策はそれぞれの団体の活動に延期などの影響を与えている。その中で、動画やパンフレットの郵送など新しいコミュニケーションが試みられ、従来の方法を補うだけには留まらない状況がみられる。
- SNSやブログを通じた当事者間のコミュニケーションは影響を受けることなく継続されている。またZoomなどのツールを利用したオンライン・コミュニケーションも活性化されている状態である。
- 自身の体験や経験を伝えたい、聞いてみたいと思っている患者・当事者が多いことは、いろんな場面で確認できている。5月30日(土)にオンライン交流会を開催することを合意した。
- 小さな体験から始めて、試行錯誤しながらこのオンライン交流会を一つの活動モデルに出来るか、継続は可能かをみていきたい。
- これまで同様に常に前向きの姿勢を継続して、この困難な時期にあっても、患者・当事者と共に前に進んでいける団体でありたいとお互いに確認できた。
■「オンライン交流会」の可能性
前野:
(リアル開催を断念した)代わりにZOOMを利用した座談会を開催しようかとも話していましたが、やっぱり60歳以上の方が多いので、物理的にどこかの会場に足を運ぶのならイメージできるだろうけど、こういうオンラインでやるってことに関してはまだハードルが高いと言われ、まだチャレンジしていません。ただ実施する場合は全国に発信することになるので、心臓弁膜症ネットワークからアナウンスしてもらった方がいいのではないかと思っています
福原:
呼びかけを心臓弁膜症ネットワークのサイトを利用することは何も問題ありません。オンラインで実施するなら、全国でやってほしいです。心臓弁膜症ネットワークはまだ全国組織とは言い難いですが、事務局のピーペック(https://ppecc.jp/)は全国にネットワークがあるのでうまく連携できればと思っています。
心臓弁膜症ネットワークは東京でリアルなイベントをやっていますけど、オンラインで全国に広げたいということですか?
今まで東京でやっていたのがなぜかって言ったら、循環器疾患の専門医が来て講演をやりますといった、他のイベントとくっつけて座談会や交流会をやってきたからです。だから、参加者である皆さんの気持ちが、交流会に出たいのが強いか、専門医の話があるから参加するモチベーションが強いのか、どうなっているかわからないんです。どっちかだけでやったことがないから、わからないんです。でも、なにか少しずつやっていかないと、全国には広がらないし、かといって専門医を集めて、何箇所でもイベントをやるといったことができる余裕を私たちは持っていないので、一つの方法としてネットを上手に使って、専門医がいなくても患者さんたちが集まって話ができるならいいと思います。
そして、それをいきなり全国に届けるというのは難しいと思います。そこで、せっかく前野さんが大阪で準備し始めたということもあったので、前野さんにコンタクトにしてくれる人たちと一緒にやれれば、そしてそこに、せっかくのネットなので、全国にお声がけができればと。お声がけはするけども、入ってくるのはひょっとしたら大阪だけでもいいかと、そういう感じで思っていました。
前野さんのブログを読んでいる人たちが、日本のどこにいるかはわからないですけど。
前野:
私もぜんぜんわからないです。その人のブログを見に行っても何も書いていなかったりします。
それにしても、まずはオンラインで人が集まるかどうかという話なんですけどね。
ちょっと僕、福原さんに聞きたいことがあるんです。弁膜症ネットのホームページはすごく立派ですが、あれをひと月にどれくらいの人が見ているのかとか、できれば教えてもらいたいんですけど。
ちなみに僕のブログが、ここ半年で毎月1000PV超えているんですが、それって割とあるほうなんですかね?
福原:
心臓弁膜症ネットワークは、去年の12月の実績ですけど、月に約3000PVありました。Facebookだと、だいたい500ぐらいのリーチ数で、ツイッターだと、3500くらいのインプレッションの数がありました。それくらいの数を平均的に出しています。これが多いか少ないかは、わからないですけど。これだけの人が訪問してくれているというのは、一年しか経っていない団体としてはけっこう多いのかなと思っています。
前野:
なんで聞いたかというと、月に3000PVとかあって、そこからどれくらい問い合わせがあるのかというのに興味があってですね。
福原:
そこは難しいですね。問い合わせはほとんどないんですよ。
前野:
僕は、去年の3月にブログの更新を一度止めて、何も更新していなくても毎月1000PVあったんです。9月くらいにASFRのことを書こうと思ってブログを再開したんですよね。でも実は、なんにも更新していないときでも、月1回更新しているときでも、1000PVはなんにも変わらなかったわけですよ。
そのなかで一人だけ、僕のFacebook仲間の医療関係者を通じて前野さんを紹介してもらいたいという方がおられました。ブログを1年半やって、割と僕自身もインパクトのある体験だと思っていても、向こうから僕と喋りたいと言ってきてくれた人は一人だけなんです。そもそも、心臓手術した後に、運動できるようになりたいと思う患者さんは少ないのかもしれません。
弁膜症ネットワークのほうも、あんまり患者さんの方から積極的に、私の話を聞いていただけませんか?とか、こういうのを企画してくれませんか、ということはないわけですよね。僕は物理的にどこかのホテルとかでやるよりも、オンラインでやるほうが実はハードルが高いと思っているんです。私の経験上でも一回目のときは心臓手術が怖くて、どうしようかと悩んでいたんですよね。例えばそのときに、zoomでこういった座談会があったとしても、迷惑に思われるかなと思って、たぶん参加しなかったと思うんです。
福原:
私も、そんなに多くの人と会っているわけではないですけど、去年一年間会ったなかで、積極的に我々や、いろんな医療従事者にコンタクトしていた患者さんは、5人はいなかったと思うんです。でも、交流会を開くと「参加して話をしたいです」という人は多いんです。人の話は聞いてみたいし自分の話も伝えたいけど、その自分の治療法とか悩みだとかを積極的にコンタクトしてまで知りたい人っていうのは意外にいないと私もそういう実感は持っています。
でも、黙って聞いて帰っていくかというとそうではなくて、来たからには自分の経験を話して帰りたいとか、聞かれたらどんどん追加のコメントを出すとか、そういう人は多かったです。
鏡味:
ASFRではジョギング&ウォーキング大会だけじゃなくて「ウォーキング交流会」もやっているんです。そこで、参加された皆さんに自己紹介がてらどんな経験をしたのですかと聞くと、私の印象はみんな話したいんだな、ということでした。
話したいけど話す機会がなくて、同じ体験をした人の交流会という場だと、安心して話せるのだと思います。「1分で」と言っても、10分くらい話す方もいます。だからといって、その様子をネットの座談会で流していいよ、という人は多くないと思うんです。だから、リアルなイベントの開催は大変ですが、リアルな場のイベントのほうが開催して参加者が集まるハードルが低いというのはそうしたことがあると思います。
■「オンライン交流会」の2つのパターン
福原:
二つやり方があって、一つは、ここだけの話ですよという形で話して、その後は一切の記録を出さない。もう一つは、他の人にも聞いてもらいたいというパターン。
ピーペックがオンラインでやっているピーペックカフェに参加したことあるんですけど、意外と皆さんお話になるんですよね。あと、実際にピーペックが疑似運営しているカフェに行って、2回か3回話したんですけど、そこでもぜんぜん見ず知らずの、疾患も違う人たちでも、集まっていろんなことを話しているんです。みなさん話を聞きたい、話をしたい人は多いと思うし、あとピーペックの場合はそこだけの話として、後に記録を残さないというのをやっているので、ハードルが低いからそれだけの回数をやっているのかもしれないですね。
でも、その場でせっかく話したことで、有用なことは他の人にも知ってもらった方がいい、というのはあるかもしれません。
そうすると、2パターンあったほうがいいかもしれないです。
あと、この間、教えてもらったのは、Zoomの会議室という機能です。全員で話すこともできるし、参加者の何人かに分かれて「会議室」に入ってもらって、あるトピックについて話すということもできる。そして会議室をシャッフルして移動してもらうこともできるらしいんです。
参加者の皆さんのニーズは違うので、A会議室だったらテーマはこう、B会議室だったらこんなテーマ、というようにやるのも、技術的にはできるかなと思っています。
鏡味:
ネットにせよリアルにせよ、イベントを開催するのはやはりかなり大変です。東京の心臓弁膜症ネットワークもASFR協会も人手がたくさんあるわけではないので、簡単ではありません。
オンラインなら、場をつくって、来た人を待ち受けることはできると思います。私の知り合いもそうしたことをしていました。
だから例えば、ネットで何日の何時からZoomを開放するから、参加したい人は参加してねと。誰かが来たら、自己紹介してもらって、話をして、盛り上げていくといった、そんな形かなと。
「何かあるんだったら集まってみませんか?何日の何時からホストは私でやりますよ」というような感じにして、それで前野さんが大阪から参加したり、鏡味も参加したりして、そしたら興味を持ってくれた人が参加してそこから会話がはじまる。そして一切記録を取らない、というような形だったらいいです。
そんな感じで、オンライン上で日時を決め、参加されるなら最初に自己紹介してね、くらいのルールで。誰も来なくても、「その日は前野さんと鏡味だけで話していました」でもいいんではないですか。二人で話していました、楽しかったのでまたみんなも来てください、次は○日開催です、というのが現実的かなと思いますよ。そういうのはすぐにやってもいいかもしれないですね。コロナでみんな集まれないので、オンラインで一回やってみます?
人が集まらなければ6月もやって、好評なら続けていって、その先には月1回恒例にします、というようにしていけたらいい。最初は2人が集まりました。5人、10人、20人と増えちゃいました、増えたら福原さんがおっしゃった会議室を分ける仕組みを使ってやりますとか、そうやって発展させていくイメージを持っておけばいいと思います。小さく始めて、広がってもできるように準備だけはしておく、そんなようなことがいいんじゃないでしょうか?
そうだったら、前野さんは「大阪から参加するよ」とブログで紹介してもらえば、見ている方も入りやすくなるんじゃないですかね。そのなかで、前野さんにもホストをやってもらって、今日はこんな話題にしましょうとか、鏡味がホストの場合は手術後の運動をテーマにしようかとか、テーマをもってやっていくのもいいと思います。
基本的にみなさんは、自分のことを話したいとはいっても、病気の話って個人の機微の話なので、誰にでも聞かれたいわけではないと思います。だから、誰もが聞ける、読めるのではなく、ホストが招待した人が参加できます、という形のほうが、経験者は安心して話ができるとは思います。
福原:
今、鏡味さんがおっしゃったように、とりあえず1回、間口を広げずにゆるい感じで開催してみて、それから得たことを次の機会に反映できればいいかなと思います。こういう会なので、最初から型を決めることはないと思うので。コロナのうちに1回やってみていいと思います。