その1.コロナ禍の中での工夫
一般社団法人After Surgery Fun Run協会(ASFR協会)と一般社団法人心臓弁膜症ネットワーク(心臓弁膜症ネットワーク)の後援でASFR協会関西準備委員会が大阪で患者交流会を開催する予定がありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止となりました。
その代わりに、心臓弁膜症ネットワークの呼びかけにより三者にてZoomでのオンライン座談会を行いましたので、その模様を3回にわけてお伝えします。
■座談会の主なポイント
- 新型コロナウイルス感染症拡大防止対策はそれぞれの団体の活動に延期などの影響を与えている。その中で、動画やパンフレットの郵送など新しいコミュニケーションが試みられ、従来の方法を補うだけには留まらない状況がみられる。
- SNSやブログを通じた当事者間のコミュニケーションは影響を受けることなく継続されている。またZoomなどのツールを利用したオンライン・コミュニケーションも活性化されている状態である。
- 自身の体験や経験を伝えたい、聞いてみたいと思っている患者・当事者が多いことは、いろんな場面で確認できている。5月30日(土)にオンライン交流会を開催することを合意した。
- 小さな体験から始めて、試行錯誤しながらこのオンライン交流会を一つの活動モデルに出来るか、継続は可能かをみていきたい。
- これまで同様に常に前向きの姿勢を継続して、この困難な時期にあっても、患者・当事者と共に前に進んでいける団体でありたいとお互いに確認できた。
■参加者
福原斉 (一般社団法人心臓弁膜症ネットワーク 代表理事、里山の再生・保全を行う「まちだ結の里」 事務局長)
前野充男 (blog「エセランナー 2度の心臓手術からフルマラソン完走への復活ロード~ビハインドなんか、笑って乗り越えるで~」著者、ASFR協会関西準備委員会代表、大手メーカー社員)
鏡味正明 (一般社団法人After Surgery Fun Run協会 理事 事務局長、一般社団法人心臓弁膜症ネットワーク 理事、マーケティング会社代表取締役)
○それぞれのサイトのURL
一般社団法人心臓弁膜症ネットワーク(https://heartvalvevoice.jp/)
一般社団法人After Surgery Fun Run協会(https://www.asfr-japan.com/)
blog「エセランナー2度の心臓手術からフルマラソン完走への復活ロード~ビハインドなんか、笑って乗り越えるで~」(https://ameblo.jp/mrmaeno/)
■コロナ禍の中の工夫
鏡味:
実は、豊洲の大会は5月10日を予定していました。去年福原さんにも参加してもらった大会を豊洲でやっているはずだったのですけど、コロナの影響で延期となりました。現時点ではいつ開催できるのかも難しいです。
そのかわりに動画を作ったり、パンフレットを作ったりして、参加者や世の中への発信を強化しています。心臓手術をした方の中には比較的高齢でまだネットが不得意な方もおられます。参加申し込みもネット申込でない方もたくさんいます。そのため動画の内容をパンフレットにして、いままでの参加者には郵送しました。お子さんやお孫さんに聞いていただければ、QRコードでスマホから動画を見ることもできるだろうし、パンフレットだけでも体操ができるようにしています。心臓弁膜症ネットワーク理事の寺田さんがとても気に入ってくれて、その運動を自宅でやってくれています。そういった反応がすごく面白いし、いいなと思っています。さらに、そうした反応があったことを、いろんな方に伝えていけたらなと思いながらやっています。
我々がやっているのは「心臓手術をした人も一緒にジョギング&ウォーキング大会--After Surgery Fun Run」(ASFR)なんですが、皆で集まるイベントというのは、社会貢献活動としてすごくわかりやすくて良いのですよね。今回はできなくなってしまいましたけれども、何にもしていないわけじゃなくて、何かしているということを世の中に伝えていかないといけないと思っています。
動画などは実はボランティアの方たちからアイデアをもらって具体化しました。大会に向けて準備本格化する時期にコロナが流行り始めていて、「やれないんじゃないか」という心配が出てきていました。
できなくても代わりにやりましょうよと、出てきたアイデアの一つが「動画配信(YouTubeチャンネル)」(https://www.youtube.com/channel/UCqCkNNyQxjCdNicRWW2Y8Kw)でした。
そしたら、ASFR協会理事のリハビリテーション科専門医の笠井先生が考えてくれたのが、第一弾の体操動画でした。(https://www.youtube.com/watch?v=RXNXwPrYyVc)
動画編集をしてくれたのはスポンサーの一つであるエドワーズライフサイエンスからボランティア参加してくれた安齋さんです。
ASFRの活動は多くのボランティアの方の力を借りています。ただ、動画編集は誰もができることではないので、その方だけに負担がかかってはいけないとは思っています。いろいろ運営は悩みつつ、ASFRとしてはイベントがなくても、違うことで活動を世の中にアピールしていこうとしています。
前野:
本当は僕らも4月19日に大阪で交流会をやる予定だったのです。会場も準備したのですが、やはりコロナで断念しました。
福原:
前野さんは秋に病院の協力を得てAfter Surgery Fun Runを準備されているということですが、もしリアルで交流会をやるとしたら、病院とかその近くでやって、そこに来ている高齢の方も含めて患者交流会をやるとか、そういうのだったら来てもらえるんじゃないですか?
前野:
もともと4月19日は、新大阪で交流会をやろうとしていました。医療関係者で非常にサポートしてくれる方がいてくれまして、会場も駅近くに準備していただきました。(病院の近くは良さそうですが)参加を希望される患者さんのアクセスのしやすさを考えて、(病院の近くではなく)新大阪で患者会をやろうと思ったんです。それでどうやって集客しようかということでチラシとかも考えていたし、血管外科の医師にも講演をしてもらうはずでした。
今、協力のご相談をさせていただいている病院の理事長様にもジョギング&ウォーキング大会開催を前向きに考えていただいています。何かあったときの救急車のスタンバイとか、そういうところも具体的に考えていただいています。なので、まずはリアルに患者会をやろうと思っているんですね。
私は、1度目の手術の時、不安でいっぱいでした。その不安を和らげてくれたのが、”カムバックハートさん”のブログ『心臓手術体験記』です。患者さんにとって同じ病気経験者の話を聞くことは貴重です。でも、心臓手術経験者って自分の周りにそうそういませんよね。それが50歳以下の患者さんとなると(当時、私は46歳)、さらに見つけることが難しかったです。
カムバックハートさんのブログは本当に心臓病になった患者の気持ちをよく分かっているんですよね。患者の気持ちで書いているというのが共感を得ているんだと思います。カムバックハートさんには、「がんばろう」って感じじゃなくて、患者に寄り添っているような、不思議な魅力があるんですよね。
また、カムバックハートさんは、術後12年経った今もブログを継続されており、ブログ等でつながりができた心臓病仲間との集まりも非定期に開催されています。20名もの方が参加されています。
細々とですが、僕もブログをしています。心臓手術からの復活をテーマに書いています。2度目の入院中はけっこうしんどかったんですけど、「僕は手術したから気をつかってよ」みたいな闘病色を感じてほしくなかったですし、実際、闘病したとは思っていません。僕よりももっと病状の悪い方もおられます。だからと言って悲観せず、前向きにできることを工夫してやっていくことの大事さを伝えたいと思いました。
年齢、症状だけでなく、今までの生活や、術後のQOLに対する考え方も患者さん個々に違います。
いろんなタイプの患者さんがいるので、自分が話を聞きたいと思う病気経験者と気軽につながりができるツールや場があればいいと思います。ネットやSNSだけでなく、リアルな場での患者交流会や、今流行りのオンライン座談会等も活用できればいいと思います。