その3. 前向きに取り組みを続ける
一般社団法人After Surgery Fun Run協会(ASFR協会)と一般社団法人心臓弁膜症ネットワーク(心臓弁膜症ネットワーク)の後援でASFR協会関西準備委員会が大阪で患者交流会を開催する予定がありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止となりました。
その代わりに、心臓弁膜症ネットワークの呼びかけにより三者にてZoomでのオンライン座談会を行いましたので、その模様を3回にわけてお伝えします。
■座談会の主なポイント
- 新型コロナウイルス感染症拡大防止対策はそれぞれの団体の活動に延期などの影響を与えている。その中で、動画やパンフレットの郵送など新しいコミュニケーションが試みられ、従来の方法を補うだけには留まらない状況がみられる。
- SNSやブログを通じた当事者間のコミュニケーションは影響を受けることなく継続されている。またZoomなどのツールを利用したオンライン・コミュニケーションも活性化されている状態である。
- 自身の体験や経験を伝えたい、聞いてみたいと思っている患者・当事者が多いことは、いろんな場面で確認できている。5月30日(土)にオンライン交流会を開催することを合意した。
- 小さな体験から始めて、試行錯誤しながらこのオンライン交流会を一つの活動モデルに出来るか、継続は可能かをみていきたい。
- これまで同様に常に前向きの姿勢を継続して、この困難な時期にあっても、患者・当事者と共に前に進んでいける団体でありたいとお互いに確認できた。
■前向きに取り組みを続ける
鏡味:
あっという間に時間が過ぎていますが、皆さんの今後の活動を教えてください。
僕はまず患者会をひらいて、ASFRの「心臓手術をした人も一緒に ジョギング&ウォーキング大会」を関西でもやりたいと思います。
そのためには、まず自分が健康でいないといけないですね。だから本当は今年の9月に、60kmくらいのウルトラマラソンに出る予定だったんです。コロナで中止になってしまいましたけど。ランニング仲間5、6人で一緒に出ようかという話をしていたんです。誰一人として心配してくれる人はいませんでした。もうみんな、僕が心臓病患者だったっていうのは忘れているんですよ。(笑)
ASFRは毎年行っている大会「心臓手術をした人も一緒にジョギング&ウォーキング大会--After Surgery Fun Run」(ASFR)が5月にできなかったので、最初に申し上げたようにいろんな手段で情報発信をしようとしています。
僕らとしては、東京・豊洲以外のいろんなところでやってもらったほうがいいと思っているので、そのサポートをしようと思っています。前野さんが準備している関西の大会も、むしろ僕の方から押しかけて手伝いたいくらいの気持ちで、やっていこうと思っています。
あと具体的には、八丈島も動いていただいているのですが、今、コロナで行くことも出ることもできないようです。焦らず地元の信頼を得ながら進んでいこうかなという感じです。
それ以外に、前野さんのような奇特な方が他の地域にもでてきてやってもらえないかと思っています。お医者さん側でも、病院の人が主体となってこういったイベントをやってくれる可能性は難しいというのが明確になってきています。だけど、病院の理解、協力は不可欠です。
趣旨としては理解してもらえますし、イベントが楽しいね、ということは出てくれた人にはわかるんですけど、そもそもどうしてこうした活動を続けているのかという部分がおろそかになってしまう。こういう活動するときには、おおもとになる原点とか、どういう想いでやっているのかというのが必要だと思います。そういったことを伝えていくとき、同じ人間が説明すれば大きくはぶれないですけど、活動が広がっていくときに関与者が増えていくとどんどんぶれてしまう可能性がある。そこをぶれないようにするにはどうすればいいかを考えています。
ASFR協会理事の小林さんからそうした思いは「石に刻め」というアドバイスをもらいました。石碑のように長く残るものを作ったほうがいいんだと。そういうことが大切だという話を聞いたので、いま僕がやろうとしているのは、“ビジョンブック”(コンセプトブック)の作成です。どうしてASFRという運動が始まったのか、どんな想いをもって始まったのか、だから世界に広がったらいいんだというのを一冊の小冊子みたいなものにまとめて作ろうとしています。そうすることで、その冊子を渡すだけでぶれずに理解してもらえるというのを目指しています。
福原:
心臓弁膜症ネットワークで決めていることでいうと、今、患者さんの実態調査をやろうということで、かなり大きな規模で、できたら1000人くらいの規模で患者さんの声を聞きたいと思い、去年から準備をしています。内容はかなり決まってきていて、実際にアンケートをつくって配る直前のところまで来ています。でも、このコロナの騒ぎで、病院側が一旦保留にしてほしいということになっています。
病院側が進まなくても、個人に対してはいろいろ調査ができるので、私達の知っている人たちに頼めば、100人とか、それくらいの個人だったら集まるんじゃないかと。1000人規模は、大きな病院の2つか3つと組んでやらないとできないと思いますが、今のところいくつか大きな病院とできるだろうと思っているので、あながち難しい数字ではないと思っています。配信は全国の循環器疾患の病院にお願いしようしているので、もっと大きな規模でできるかもしれません。なんらかの形で年内には集計をまとめて、患者さんの実態を見たいと思っています。実は、一昨年の12月から1月にかけて、小さな調査をやっているんですけど、あまりにも数が少なかったし、対象者に偏りがあったので、外に出すことができませんでした。今度はそれなりの大きさでやって、患者の実態像やどんな問題点があるのか、今後はどこに力を入れていこうかというのを用意していきたいなと思います。
2つ目は、循環器の対策基本法(注1)の話です。2年前に成立した法律で、今年はその具体的な方策が決まる予定なので、今はその話を一生懸命やっているところです。1月や2月には活発に話ができていて、我々の話も聞きたいと声がかかっていたのですが、3月くらいからコロナがあって、今は接点がなくなりつつあります。患者会として、我々はこんなことを考えていますという要望や意見は送っていますし、うまくいけば、厚労省や学会ともつながって話を聞いてもらえる機会ができると思います。やっぱり当事者の声が入った法律は大切だと思うので、それのお手伝いをできる団体になれればいいと思っています。
(注1:健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法)
その対策基本法というのは、政治家とやっているんですか?
福原:
政治家ともやっていますし、厚労省ともやっていますし、学会ともやっています。いい関係が構築できそうな段階までいっていたんですけど、ここ2ヶ月くらいは、音信不通状態になっていますね。対策基本法の話をする委員会がありまして、その会自体も前は傍聴ができたんですけど、今は誰も傍聴ができないクローズな環境になっています。ただ、議事録だけは公開されていて、それを見てみると、今まで傍聴人がいたからはっきり言えなかったところが、クローズになって突っ込んだ話ができているとかそういったところも見えています。なので、クローズにはそれなりのいい部分もあったんじゃないかと思っています。
3つ目に、患者会を年3回開きたくて、そのうち1回は無料検診とくっつけた患者交流会にしたいというのがあります。ただ、今のコロナのことがあるので、オンライン交流会を早急にカタチにしたいと思います。引き続き、患者さんとの交流に力を入れていきたいと思います。